【読書感想】『花束は毒』このタイプの本には初めて出会った!
なるほど、いいタイトルだ。
「花束」と「毒」にはそんな意味があったのか…と余韻に浸る今が最高にいい時間に思える。
https://blogmura.com/ranking/in?p_cid=11122025
この本を読み終えた今、私の脳内では過去に読んだことのないジャンルの本として分類されている。
枠組みとしては推理小説の類になると思うが一括りにはできない。
物語はクライマックスまでたんたんと流れていく。
大きな山や谷はない。
振り返ってもあまり印象のない文章であった。
つまらないわけでは決してない。
しかし、読み終えてみれば平坦なストーリーはクライマックスのための入念な準備のように感じる。
強烈なクライマックスの印象がより鮮明に記憶に残るための計算された準備なのである。
この準備がこの作品の異様さを醸し出す気がする。
さて、この作品のテーマはクライマックスの展開がそのままテーマだと言っていいと思う。
要は「伝えるのが正解か、伝えないのが正解か…」ということである。
「究極の選択」と言った方がいいのだろうか。
自分の正義を貫くナルトのような思考回路なら簡単なのだろう。
しかし、表面上は”正義”を選択すれば悲しみを与えることは間違いなく、”現実”を選択すれば目の前の幸せは保つことができる状況がそこにある。
そこに ”if” の要素が加わると何が正解なのか分からなくなる。
小学校時代だったか中学校時代だったか、道徳の授業でこのようなモヤモヤする授業を受けた記憶がある。
その授業では正解がなかった記憶がある。
たしか大学時代にも教職の授業で道徳の授業の大切さを教わった。
当時は教科「道徳」が必修になる前であったが、担当教授が「モラルや人の気持ちを考えることの大切さ」を熱く語っていたような気がする。
そういうことから考えるとこの本は”大人の道徳の教科書”のような一面がある気がする。
個人的にも正解のない問いについて考えることは無駄ではないと思う。
私たちが生きる現実世界には選択する機会が星の数ほどあり、その中の極一握りの選択が私たちの人生を左右していると思う。
誰にでもいつか必ずくる大事な選択のために「決断力」養っておきたいものだ。
この本は「強姦事件」が扱われ内容はややセンシティブなものになるが、我が子に読ませたい作品のひとつになった。
テーマとは少し離れるがこの作品を読んでいて後ろめたさは伝わるものだなと感じた。
大それた後ろめたさではないがそれなりに経験がある。
全く関係のない会議で、たまたま自分の後ろめたさを感じることに関わるワードが出るだけでドキッとしてしまうあのなんとも言えない嫌な感じは誰しもが体験したことがあるだろう。
その逆で、何も心当たりがないのに悪人扱いされることもある。
これはこれで誰も理解してくれないあの孤独感は終わりのない地獄にいるような気分になる。
この物語は、対義語である「後ろめたさ」と「正々堂々」をうまく表現している。
故に、できる限り真っ当に生きたいと思わせるのだろうががなかなか思い通りにはいかない。
人生は難しい…
例えば今、
カメラ好きという共通の趣味を持っている友達の部屋で遊んでいる。
友人があるショッピングサイトで「ずっと欲しかったカメラが安く手に入った!」と言っている。
実は先週、それと同じカメラを私も購入を検討していた。
私は最終的に別のカメラを購入したが販売金額を覚えていた。
友人が購入した金額より3000円も安く売っていた。
目の前で大喜びしている友人にこの事実を伝えるだろうか?
伝えれば友人はがっかりすること間違いなし。
しかし、現実を知ることはできる。
伝えないとすれば友人は喜びの中にいることができる。
もし伝えたら友人から〇〇されたら…
もし伝えなかった場合、後日〇〇が起きたら…
こんな簡単な例えでは軽すぎるな…
考えれば考えるほどこの本の魅力にハマっていく。
https://blogmura.com/ranking/in?p_cid=11122025
ちなみに究極の選択を迫られるアニメといえば『Re:ゼロから始める異世界生活』ですね!
あの死に戻りの世界にどっぷりハマったら抜け出せませんよ〜